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気候変动?统合评価モデル分野の未来を开く新提案 -オープンで透明な国际比较研究の构筑へ 研究成果

掲载日:2025年10月16日

概要
パリ協定に基づく世界の気候対策は進んでいますが、その科学的な根拠となる将来予測やシナリオは、限られた地域や研究機関に偏っているのではないか、という懸念がIPCCの第6次評価報告書の公表後指摘されてきました。今回、京都大学大学院工学研究科の藤森真一郎教授、オーストリアに本部を置く国際研究機関である国際応用システム分析研究所(IIASA : International Institute for Applied Systems Analysis)のVolker Krey 研究主幹(Research Group Leader)、 Keywan Riahi研究部門長(Research Director)、東京大学未来ビジョン研究センターの杉山昌広教授、立命館大学総合科学技術研究機構の長谷川知子教授らを中心とする国際研究チームは、この課題を解決するための新しい研究の枠組みを提案しました。
研究チームが提案するのは「オープンで透明性の高い国际プラットフォーム」です。従来のモデル比较研究では、欧米の一部の研究机関が中心となり、途上国や新兴国の视点が十分に反映されないまま、国际的なシナリオや政策提言が形成されてきました。新しい仕组みでは、研究テーマの提案から结果の公开までをすべて明确な手顺に沿って进め、谁もが理解し、参加できる体制を筑きます。
流れは大きく4つに分かれます。1)まず研究者がテーマを「提案」し、2)それを基に「モデル実験のプロトコルが作成?公开」されます。3)そのプロトコルに基づき世界中の研究者が自由に「参加」でき、作成したシナリオやデータは共通のデータベースに「共有」されます。最后に、4)分析や品质チェックを経た成果は「公开」され、政府や公司、市民社会、教育现场などが広く活用できる形で提供されます。本研究が示すのは、気候変动対策を进めるうえで「科学そのものの进め方」を変えていく必要があるという视点です。世界中の研究者を结びつけ、多様な知见を结集することで、より公平で実効性のある気候政策の基盘を筑くことができると考えられます。
本研究成果は、2025年10月16日に、国際誌 Nature Climate Change に発表されました。
 
オープンな研究コミュニティを作ることで世界の様々なチームがモデル実験に参加しやすくなるイメージ

1.背景
気候変动対策の技术的な可能性、それにかかる费用や政策の効果を长期的な将来にわたって描くために、これまで「统合评価モデル」と呼ばれるシミュレーションモデルを使って长期気候缓和シナリオが作られてきました。これらの研究成果は、国连の気候変动に関する政府间パネル(滨笔颁颁)の报告书や各国の政策づくりに欠かせない基盘となってきました。この滨笔颁颁が収録している长期シナリオの中で「モデル比较プロジェクト」はその大部分を占めています。モデル比较プロジェクトは复数の国や机関の研究チームが同様の実験设定に基づきモデルシミュレーションを行いその结果を比较する研究手法です。しかし、それに参加できる研究チームが限られており、世界全体の多様な视点を十分に反映できていないという课题があり、これは滨笔颁颁の第6次评価报告书が公表されて以来、大きな悬念事项となりました(図1)。
そこで本论文では、この仕组みをより开かれた形に进化させ、谁でも参加できる包括的な国际プラットフォームをつくろうという提案を行いました。これにより、途上国を含む幅広い地域の研究者が参加でき、偏りの少ない将来予测や、より信頼できる分析が可能になります。さらに、オープンな议论を通じて研究方法を改善し、気候政策に役立つ知见を强化することが期待されます。


図1 IPCC第6次評価報告書のシナリオのソース

2.研究手法?成果
研究内容
本提案の中核にあるのが「国际的に共有される明确な流れ」です。これまでの研究は一部の地域や限られた研究者だけが中心となり、透明性や参加のしやすさに欠けていました。新しい仕组みでは、すべての研究活动が公开されたプロセスに沿って进められ、谁もが理解し、参加できるようになります。流れは大きく4つの段阶に整理されます。(図2)


図2 新しい提案の手順

1)「モデル比较研究の内容の提案とその承认」
研究者や研究チームは、取り组みたいテーマや课题、具体的な目的を文书にまとめ、中央の组织に提出します。気候変动の影响评価、再生可能エネルギーの导入、农业や土地利用の変化など、多様なテーマが対象となります。提出された提案は研究コミュニティによって精査され、国际的に意义があり、科学的に妥当であると判断されれば承认されます。
 
2)「モデル比较実験のプロトコルの公开」
研究概要に基づきどのようなモデル実験を行い、シナリオを计算し、それを基にどのように分析するかなどを记述したプロトコルを公开します。これにはモデルとして求められる要件や、データとして提出されるべき変数のリスト等も併せて収録します。このプロトコルは国际的な研究课题として広く共有され、世界中の研究者に参加の扉が开かれます。
 
3)「実际のモデル比较実験とそのデータ提出」
承认されたテーマに関心を持つ研究者や机関は、自由に参加を表明できます。大规模な研究机関だけでなく、途上国の小规模チームや若手研究者も参加できるのが特徴です。参加チームは共通のルールに従ってシナリオを作成し、その结果を共通データベースに登録します。データは国际的に统一された形式で整备されるため、异なるモデル同士の比较が容易になります。提出データは品质チェックを受け、误りや不备があれば修正が求められるため、信頼性と再现性が确保されます。
 
4)「结果のチェック修正を経て公开」
シナリオの品质チェックを通过した结果は、论文として学术誌に掲载されるだけでなく、谁でもアクセスできる形で公开されます。これにより、政府や国际机関だけでなく、公司や教育机関、市民社会も研究成果を活用できます。公司は脱炭素戦略の検讨に、市民は地域の気候行动に、教育机関は教材として利用することができます。
 
このように「提案提出&谤补谤谤;プロトコルの公开&谤补谤谤;実験参加?データ共有&谤补谤谤;公开」という流れを明确にすることで、研究は透明で开かれたものとなり、世界中の知见を结集する基盘が整います。
 
3.波及効果、今后の予定
本提案の利点と课题
本提案の最大の利点は、多様な地域の声を反映できる点にあります。これまで参加できなかった国々の研究者が新たに加わることで、将来シナリオに変化があるかもしれません。もっと途上国の开発に配虑した気候缓和策シナリオが増えるといったことも予想されます。また、従来の枠を超えた発想や研究分野の広がりが生まれるでしょう。结果として、世界の気候政策により公正でバランスの取れた科学的根拠を提供できます。
一方で、実现には课题もあります。新しい研究チームを支えるための教育や研修、データを扱うためのサーバーや技术支援、そして持続的な资金确保が欠かせません。特に途上国では、基盘となる研究体制を筑くために长期的なサポートが必要です。资金面でも、特定の国や地域に偏らない多様な支援が望まれます。

今后の展望
今回の提案はすぐにすべてを変えるものではなく、段阶的に移行していく构想です。すでに一部の国际的な取り组みでは、オープンな参加型の実験が始まっています。こうした経験を积み重ねながら、研究者コミュニティ全体が徐々に开かれた仕组みに移行することが目指されています。

4.研究プロジェクトについて
本研究は、科学技术振兴机构(闯厂罢)先端国际共同研究推进事业(础厂笔滨搁贰)「世界规模エネルギーシステムモデルの开発及びそれを用いた革新的なエネルギー技术评価と脱炭素エネルギーシステムの提示」(闯笔惭闯础笔2331)、环境研究総合推进费(闯笔惭贰贰搁贵20241001)、住友电工グループ社会贡献基金、ベゾス?アース?ファンドによるシナリオ?コンパス?イニシアチブ(助成金骋-2023-201305841)の支援を受けて実施されました。

摆用语解説闭
统合评価モデル: 将来のエネルギー、土地利用、経済、気候などを推计するモデルである。国际的な政策决定のための情报源となったり、気候関连研究分野で共通の気候実験ができるように将来シナリオを提供したりするなど重要な役割を担っている。
モデル比较研究: 统合评価モデルの结果は使うモデルに依存する倾向があり、得られた知见が本当に正しいのかわからないため、复数のモデル结果を相互に比较することで结果の顽健性や不确実性を评価する。この一连の手法をモデル比较と呼ぶ。

摆研究者のコメント闭
気候変动问题はそもそも全世界を巻き込む问题で、研究自体も政治に左右されやすいという侧面を持っています。研究はより包摂性を持つべきであり、そのために一定程度効率性を落とすということもやむを得ないかもしれませんが、それでも科学コミュニティがよりよい方向へ向かうことを切に愿い、またそれに向けて尽力したいと考えています。
また、本研究は闯厂罢の础厂笔滨搁贰プロジェクトで提案し、トップ研究者间での议论を通じて达成される研究コミュニティ全体の方向性を决めるような研究成果となりました。国际的な交流を积极的に行うことで研究の幅は広がることを示せたかと思います。今后は若手にも积极的にこういった机会を活用して、研究者として飞跃していってもらえるようにサポートしていきたい所存です。

论文情报

Shinichiro Fujimori, Volker Krey, Keywan Riahi, Masahiro Sugiyama, Tomoko Hasegawa, James Edmonds, Celine Guivarch, Sergey Paltsev, Steven Rose, Roberto Schaeffer, Massimo Tavoni, Saritha Sudharmma Vishwanathan, Detlef van Vuuren, Matthias Weitzel, "Towards an open model intercomparison platform for Integrated Assessment Models scenario," Nature Climate Change: 2025年10月16日, doi:10.1038/s41558-025-02462-3.

お问い合わせ先

[研究に関するお问い合わせ先]
藤森 真一郎 (ふじもり しんいちろう)
京都大学大学院工学研究科 都市环境工学専攻 大気熱环境工学分野 教授

[JST事業に関するお问い合わせ先]
荒川 敦史 (あらかわ あつし)
科学技術振興機構 国際部 先端国際共同研究推進室

[報道に関するお问い合わせ先]
京都大学 広報室国際広報班
東京大学 未来ビジョン研究センター事務局 広報?国際チーム
立命館大学 総合企画部広報課
科学技術振興機構 広報課
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