ワクチンに関する误情报が新型コロナウイルス感染症死亡者数に与えた影响を解明研究成果

- 日本における2021年の新型コロナウイルス感染症の死亡者数は约14,000人でしたが、数理モデルを用いた解析から、ワクチンに関する误情报の问题に现実よりもうまく対処してワクチン接种率を上げることができた场合は431人の死亡を回避でき、対応が现実よりもうまくいかず接种率が下がってしまうと死亡者数が1,020人増えると予测されました。
- 仮に现実よりも3か月早くワクチンを导入できた场合は7,003人の死亡を防ぐことができ、逆にもし3か月遅れた场合はさらに22,216人が亡くなっていた可能性のあることがわかりました。
- 本研究では、日本において误情报とワクチン导入のタイミングが及ぼした影响の程度を定量化することに成功しました。今回のモデルとそれによって得られた知见は、つぎのパンデミックが発生した际など今后のワクチン接种戦略を考えるのに役立つものとなります。

ワクチンに関する误情报が新型コロナウイルス感染症の流行に与えた影响を数理モデルで解析
発表内容
东京大学国际高等研究所新世代感染症センターの古瀬祐気教授と、东北大学大学院医学系研究科の田渊贵大准教授による研究チームは、ワクチンに関する误情报が新型コロナウイルス感染症のワクチン接种率、ひいては死亡者数に及ぼした影响について、数理モデルを用いた反実仮想シミュレーション(注1)によって明らかにしました。
新型コロナウイルス感染症の流行に际して、日本を含め世界中でさまざまな误情报が拡散しました。ワクチンの有効性や安全性に関する内容も多く、これらの误情报がワクチン忌避につながったことが多くの先行研究で报告されています。しかしながら、それが结果としてどの程度の影响を与えたのかはよくわかっていませんでした。
本研究チームは、これを明らかにするために、まず「新型コロナウイルス感染症の感染者数」「ワクチンの接种率」「ワクチンの有効性」「変异株の种类」から「死亡者数」を予测する数理モデルの开発を行いました(図1)。
新型コロナウイルス感染症の流行に际して、日本を含め世界中でさまざまな误情报が拡散しました。ワクチンの有効性や安全性に関する内容も多く、これらの误情报がワクチン忌避につながったことが多くの先行研究で报告されています。しかしながら、それが结果としてどの程度の影响を与えたのかはよくわかっていませんでした。
本研究チームは、これを明らかにするために、まず「新型コロナウイルス感染症の感染者数」「ワクチンの接种率」「ワクチンの有効性」「変异株の种类」から「死亡者数」を予测する数理モデルの开発を行いました(図1)。

図1:新型コロナウイルス感染症の死亡者数を予测する数理モデル
つぎに、「ワクチン接种记録システム(痴搁厂)」と「日本における新型コロナウイルス感染症问题および社会全般に関する健康格差评価研究(闯础颁厂滨厂、2021年9~10月に约3万人を対象にオンラインで実施されたアンケート调査)」のデータを用いて、ワクチン接种率とワクチンに関する误情报との関连を解析しました。その结果、2021年末时点での日本全体のワクチン接种率は83.4%であったと推定されました。また、「ワクチンの有効性データは捏造されている」「政府はワクチン接种と自闭症の関连を隠蔽している」といった7つの误情报を信じているかどうかについて调べたところ、ワクチン受容者(接种済み、および接种予定の人)のうち8.5%、ワクチン忌避者(非接种を决めた人)のうち36.6%が少なくとも1つの误情报を信じていることがわかりました。
これらのデータから、仮に误情报を信じているワクチン受容者がワクチン忌避になってしまうと、接种率は83.4%から76.6%に低下するだろうと计算できます(=误情报対策の失败)。一方で、误情报を信じているワクチン忌避者が误情报を信じていない人と同じだけの割合で接种するようになると、接种率は88.0%に上がると算出されました(=误情报対策の成功)。
そして、误情报対応についてのこれらの想定や、あるいはワクチン导入のタイミングが现実よりも早かったり遅かったりしたとする仮定を「反実仮想シナリオ」として设定し、本研究チームが开発した数理モデルに代入することで、新型コロナウイルス感染症の死亡者数の予测シミュレーションを行いました(図2)。

図2:ワクチン接种の反実仮想シナリオと、数理モデルへの代入
日本における2021年の新型コロナウイルス感染症死亡者数は累计で约14,000人でしたが、シミュレーションによると、误情报に対して现実よりもうまく対処してワクチン接种率を上げることができた场合は431人の死亡を回避できたことがわかりました。一方で、误情报への対応が现実よりうまくいかず接种率が低下した场合、死亡者数は1,020人増えると予测されました。また、ワクチン导入のタイミングについて、仮に现実よりも1か月早くワクチンを导入できた场合は2,571人の死亡を防ぐことができ、逆にもし1か月遅れた场合はさらに4,796人が亡くなった可能性があるとわかりました(図3)。さらに、导入タイミングの前倒しや遅れが1か月でなく3か月だとすると、死亡者数は前倒しの场合で7,003人の减少、遅れた场合で22,216人の増加になると推定されました。

図3:反実仮想シミュレーションによる新型コロナウイルス感染症死亡者数の予测结果
今回の研究によって、日本においてワクチンに関する误情报が新型コロナウイルス感染症の流行に及ぼした影响の程度を定量化することに成功しました。开発したモデルとそれによって得られた知见は、つぎのパンデミックが発生した际など今后のワクチン接种戦略を考えるのに役立つものとなります。
本研究は、5月21日に国际科学誌「痴补肠肠颈苍别」(オンライン版)にて公表されました。
発表者
東京大学 国際高等研究所 新世代感染症センター
古瀬 祐気 教授
研究開始当時:長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 教授
東北大学 大学院医学系研究科
田淵 貴大 准教授
研究開始当時:大阪国際がんセンター がん対策センター 部長補佐
古瀬 祐気 教授
研究開始当時:長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 教授
東北大学 大学院医学系研究科
田淵 貴大 准教授
研究開始当時:大阪国際がんセンター がん対策センター 部長補佐
研究助成
本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)先進的研究開発戦略センター(SCARDA)世界トップレベル研究開発拠点の形成事業「ワクチン開発のための世界トップレベル研究開発拠点群 東京フラッグシップキャンパス(東京大学新世代感染症センター)?長崎シナジーキャンパス(出島特区)」(JP223fa627001、JP223fa627004)の一環として行われました。また、科研費(JP21H04856、JP23K09693)の支援により実施されました。
用语解説
注1)反実仮想シミュレーション
実际には起きなかったこと」を仮に起きたことにして、コンピュータなどでその后の展开を计算すること
実际には起きなかったこと」を仮に起きたことにして、コンピュータなどでその后の展开を计算すること
论文情报
Yuki Furuse*, Takahiro Tabuchi * 責任著者, "Impact of COVID-19 vaccination by implementation timing and coverage rate in relation to misinformation prevalence in Japan," Vaccine Volume 59: 2025年5月21日, doi:10.1016/j.vaccine.2025.127273.
論文へのリンク ()
お问い合わせ先
〈研究に関する问合せ〉
東京大学 国際高等研究所 新世代感染症センター
古瀬 祐気(ふるせ ゆうき) 教授
東京大学 国際高等研究所 新世代感染症センター
古瀬 祐気(ふるせ ゆうき) 教授