足立区と东大の「おいしい」関係 学歴と野菜摂取量は比例する?


写真:厂丑耻迟迟别谤蝉迟辞肠办
「毎日野菜を食べよう!」
わかってはいるけど、このよく闻くスローガンを日々の生活の中で実践するのは多くの人にとって大変なこと。
しかし、东京都足立区ではここ数年、东京大学の研究者の协力を得て、街全体を巻き込んで市民の野菜の摂取量を増加させることに成功し、「住んでいるだけで健康になるまち」として国内のみならず国际的にも注目を集めています。
医学系研究科公共健康医学専攻の桥本英树教授が足立区の健康対策に関わり始めたきっかけは、2009年に「现代社会の阶层化の机构理解と格差の制御」という同じく东大医学部の川上宪人教授を代表とする分野横断型研究プロジェクトに参画したことでした。

医学系研究科公共健康医学専攻の桥本英树教授
「健康格差のメカニズムというのは、それまで縦割りで研究者には手が付けられていませんでした」と话す、社会医学が専门の桥本先生。「経済学だけでなく、社会学だけでもなく、横断的にやりましょうということで始まりました。社会の格差そのものはなくならないかもしれないけど、健康格差はなくせるのでは、と」。
桥本先生は地域调査を担当し、高齢化の进むベッドタウン、ベッドタウンだが所得の高い人も住む郊外、そして下町である足立区など、特徴の异なる4つの自治体の协力を得て调査を行いました。合计4,000人を超える一般住民に所得、学歴、生活习惯、健康状态、医疗利用状况などを「根掘り叶掘り」调査をした结果见えてきたのは、どの自治体でも学歴が高い人ほど健康意识が高いということでした。
「学歴は家庭での野菜や果物の摂取量とも相関がありました。果物は赘沢品ということで摂取量は所得と関係していましたが、緑黄色野菜は特に母亲の学歴で差が出たんです。现在厚労省が推奨する一日の野菜摂取量は350グラムですが、高学歴と低学歴の层ではその家庭のメンバーの野菜摂取量は20グラムも差が出ていました」。
学歴と野菜摂取量の関係については、野菜を摂取することに対する意识や知识の违いなのか、技能や时间的余裕などの问题なのかをさらに明らかにしていく必要がある、と桥本先生は话します。
亲の学歴の差は4自治体のすべてで食事に影响を与えていました。研究を论文にするだけでなく、政策に生かしてほしいと考えた桥本先生は、それぞれの自治体の担当者に丁寧に调査结果を説明します。その中で説明に「食いついてくれた」のが足立区でした。
全国平均より2歳短い健康寿命
野菜に绞って住民に介入する政策の先头に立ったのは足立区こころとからだの健康づくり课の马场优子课长。保健师のバックグラウンドを持ち、以前から自杀対策などに积极的に取り组んできました。23区で5番目に多い68万人の人口を持つ足立区ですが、ここ数年高齢化が一気に进み、生活保护率が3.68パーセントと23区で2番目に高く、さらに、区民の健康寿命(平均自立期间)は男性で76.36歳、女性で81.04歳と男女とも东京都や全国平均に比べて约2歳短いという结果が出ていました。

足立区こころとからだの健康づくり课の马场优子课长
「国や都から2歳も离れているのはどうしてか、というのを一生悬命调べる中で、国民健康保険の医疗费を调べていくと、区の医疗费の中で一番多くを占めていたのが肾透析などの肾不全関连でした。二つ目が高血圧、叁つ目が糖尿病でした。人工透析の半分は糖尿病由来だったので、糖尿病関连が一番高いということ分かりました。糖尿病は脳血管疾患や心疾患の元になり、动脉硬化も进める万病の元でもあるので、重要な问题だと考えました」。
それまで区では高血圧や糖尿病予防教室など「総花的な健康対策」を区民対象に行っていましたが、健康教室に来る层には限りがあり、効果が低いと判断。糖尿病に绞り、その中でも食事习惯に注目しました。
食事、特に野菜をターゲットにした対策を区としてやりたいと考えた马场课长は2013年、桥本先生に相谈します。それ以降、调査やアドバイスの面で、桥本先生は足立区の取り组みをバックアップしてきました。
马场さんら区の职员は、駅前の外食店を一轩一轩回り、野菜を増やしたメニューを作ってくれないかと交渉。居酒屋では最初の付出しを野菜スティックにしてくれるよう頼んだり、地元で人気のラーメン屋さんに野菜たっぷりのトッピングが载ったメニューを作ってもらったり。店に対して报奨金は出せないけれども、区のウェブサイトで「ベジタべライフ协力店」として宣伝しますよ、と説得を続けました。その结果、今では食前のミニサラダや120グラム以上の野菜を使ったメニューなどを出す协力店は700店舗以上、区内全饮食店の12パーセントを占めるまでに浸透しました。
また、区の栄养士と协力して非常に简単に作れる野菜レシピをカードにして配布したり、地元の野菜市场で影响力を持つ青果屋社长に何度も掛け合い、若い単身者でも野菜を食べやすくするよう、八百屋さんで売られる野菜のポーションを小さくしたり、カット野菜にしたり、レシピを提供してくれるよう依頼しました。
こうしたきめ细やかな取り组みを见て足立区の野菜摂取量の増加を确信した桥本先生は、フォローアップ调査を2015年から2016年にかけて行いました。すると、当时の野菜価格の高腾にも関わらず、足立区では大卒以上の母亲の子供のみならず、高卒以下の母亲の家庭でも摂取量が2013-2014年に比べて増えたことが判明しました。

ベジタベライフ运动に参加する地元のスーパー。写真提供:足立区
足立区ではさらに、亲の学歴に左右されることなく子どもたちが健康的な食习惯を身につけられるよう、小中学校での食育に力を入れ、中学卒业までに谁もが自分でご饭を炊け、インスタントに頼らず味噌汁が作れ、目玉焼き程度のフライパン料理を作ることができるよう指导を行っています。
「あだちベジタべライフ」は、2017年11月、生活习惯病予防の取り组みを表彰する厚生労働省のスマート?ライフ?プロジェクトで「健康局长优良赏」を受赏。さらに、今年2月に出版された翱贰颁顿の日本の健康政策评価レポートでも言及され、「国际的に见てベストプラクティスに近い」と评価されました。
子どもから保护者に影响を与える
马场さんは、桥本先生の协力が対策作りに大きく役立った、と话します。
「桥本先生はいわゆる学术至上主义ではまったくありません」と马场さん。「自分たちが研究する中でこういう数字が取れているのでよかったらどうぞ使ってください、というような形。それも、本当にとことん、数字の読み方まで教えてくれる。非常にわかりやすく、分厚い资料を用意してくれて。これまで调査をさせてくれ、と言ってきた他の研究者の方々は皆、调査の后にアリバイ的に数字をちょろっとくれるだけでした。我々は他の自治体に比べて住民の平均学歴が少し低いのですが、この学歴がどう健康に影响を与えるのかが、桥本先生の资料で非常によく理解でき、じゃあこの问题にどうアプローチすればいいのか、ということを考える材料になりました。実际に见つけたのが子どもから入るということなのですが、今は、子どもから保护者に影响を与えられるという手ごたえを感じています」。

小松菜とのりを使った料理を実习する足立区の小学生。写真提供:足立区
桥本先生は今后も、研究を通じての支援を続ける予定です。
「子供が変わると大人が変わります。学校でこんなこと学んだよ、家でも作ってよ、というと家で食事も変わってきます。30-40代の働き盛りは検诊にも来てくれない、という问题があって、従来介入が届きにくい层でした。子どもは学校で全员届きますから従来手が届かなかったところに変化をもたらす可能性があります。学术的には、今回调べた子供たちがどうなるかを今后も追跡していきたいと考えています」。
取材?文:小竹朝子