「超短时间労働」で障害者雇用を多様化する 1日15分からでも公司で働けるモデルの研究、社会実装


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インクルージョン(包括)やダイバーシティ(多様性)が社会において重要な概念であることは様々な场面で话题に上るようになりました。それにも関わらず、障害を持った若者の多くは、学校教育の终了が近づき仕事を探し始めると、选択肢が一気に狭まることに気づきます。
日本では、多くの公司が大学を卒业したばかりの若者を新卒採用し、採用された人たちも、终身とまではいかなくとも长年一つの公司に勤务することが一般的です。しかし、このような働き方は、週40时间きっちり働くという硬直的な就业形式にそぐわない障害者の人たちの多くを雇用市场から缔め出すことにつながってきました。
先端科学技术研究センター(先端研)の近藤武夫准教授は、このような状況を打開すべく、「超短時間労働」という、最短で1日15分の労働でも報酬を得られるような就業モデルを提案しています。
「本来、雇用というのは労働时间の长さとは関係ないはずです」と近藤先生は话します。「けれども日本では、週40时间、年间12か月働くキャリアモデルが中心となってきました。これは、健康な成人の男子を暗黙のうちに想定したもので、それ以外を排除する结果となりがちな雇用モデルです」。

2017年夏に障害を持つ中高生のために開かれたDO-IT Japanのワークショップに参加する生徒。東京大学の先端科学技术研究センターによって運営されている。© 2018 DO-IT Japan.
心理学を研究していた近藤先生(42)は、2005年に先端研に教員として着任して以降、DO-IT Japanという、小学生から大学院生までの、将来リーダーとして活躍することが期待される障害を持つ生徒たちが、コンピュータ技術や自己アドボカシーのスキルを身につけ中等、高等教育や雇用へ移行するプログラムの運営に携わってきました。
DO-ITは英語で Diversity(多様性) Opportunities(機会) Internetworking(相互ネットワーキング) Technology(技術)の略で、もともとはアメリカで始まったプログラムです。日本では2007年に、先端研の中邑賢龍教授の主導で始まり、これまでに注意欠陥?多動性障害、学習障害、自閉症や、聴覚、視覚、身体障害など、障害の種別によらず多様な障害のある生徒?学生が参加してきました。
近藤先生は、顿翱-滨罢に参加した学生が学业面で成功するのを喜ばしく感じると同时に、就労の段阶に来ると彼らが大きな障壁に直面することを知りました。
「私たちは今まで、日本で初めて発达障害による书字の障害があるために、ワープロを使って大学入试を受けた生徒や、学习障害(読字障害)のある生徒で初めて、センター试験を音声(代読)で受験した生徒など、日本初の事例を辈出してきました」と语ります。「しかし、就职という段阶に至ると大学受験とはまた违った大きな壁にぶつかります」。日本型の雇用モデルは、例えば、移动に困难があって食事やトイレ利用に介助が必要だったり、非常に优秀だけれども週に10时间までしか働けない、といった人たちには対応することが难しい、と近藤先生は言います。
雇用率算定の条件
1960年に制定された障害者雇用促进法は几度もの改正を経て、现在、45.5人以上の従业员(短时间労働者は0.5人分と算定)がいる一般事业主は、障害を持つ従业员が全従业员の2.2パーセント以上を占めるよう义务付けられています。雇用率を満たした公司には助成があり、満たさない公司には纳付金が课せられます。
しかし、このスキームも、障害者が最低週に30时间働くことが前提になっています。20时间以上30时间未満働く场合は雇用率に0.5人として算定され、それより短い时间働く人は全く算定されません。
短时间労働が认められないため、长い时间働くことが难しい障害者は、国の援助付き雇用である福祉作业所や地域活动支援センターなど、通常の公司での雇用とは异なる场所に所属することしか选択肢がありませんでした。ちなみに作业所での赁金は、现在全国加重平均で850円となっている最低赁金を大きく下回ることが一般的です。
このような状況を打破するため、近藤先生は、中邑先生と共に、2016年に障害者の超短時間雇用プロジェクトを始めました。Inclusive (インクルーシブ)and Diverse (多様な)Employment (雇用)with Accommodation(配慮)の略でIDEAモデル研究と呼ばれ、これまで、ソフトバンク株式会社と連携して本社で非常に短い時間から障害者を雇用できる社内制度を構築したり、川崎市、神戸市と連携して、自治体とその自治体にある多くの企業で、超短時間からの雇用ができる地域システムを構築したりしてきました。
2016年3月时点で滨顿贰础モデルを通じて46人の人が週で合计347时间の労働を提供しています。
ソフトバンク株式会社(以下ソフトバンク)では都内オフィスの40以上の部署で24人のショートタイムスタッフを雇用し、週165时间分の雇用を実现しています。(2018年6月末时点)。川崎市や神戸市では、市役所内の様々な部署と连携して、働きたい人を见つけ出し、支援してきました。どちらの自治体も独自に障害者への就労移行支援事业を行っていたのですが、20时间以上働けない人は対象となりにくい状况がありました。
现在、滨顿贰础を通じて雇用されている人で一番勤务时间が短いケースは週1时间です。时间が短くても最低赁金かそれ以上のレベルの报酬が支払われます。
明确な职务の定义
近藤先生は、プログラムの成功の键は、协力公司の従业员の仕事のうち、その従业员の本务ではない周辺业务を特定し、滨顿贰础経由の労働者と従业员が协働できる仕组みを作ることだと话します。もう一つ重要なことは、超短时间雇用で働く人のタスクをできるだけ明确に定义することで、労使両方の混乱を避け生产性を上げることだといいます。
「企業には、『障害者のための仕事、障害者ができる仕事を切り出そう』いう発想をしないでくださいと話しています。代わりに『あなたの部署で一番仕事が集中して困っている人は誰ですか?』と聞きます。この仕事を誰かが担ってくれると職場が助かる、というところから発想するのです」。 企業の従業員のみならず、彼らの上司にもコンサルティングをすることで、従業員の本務であるタスクとそうでないものを分けることができるといいます。

東京大学先端科学技术研究センターの近藤武夫准教授
「日本の雇用では职务定义书を交わす惯习がありません」と近藤先生は言います。「我々は、过度にジェネラリストあることを労働者に求めず、障害のある人が得意な部分を生かして働きけるように工夫します。また超短时间で働く场合、フルタイムの労働者に求められがちな、职场の空気や文脉を読んで临机応変に求められることを何でもやる、という働き方は困难です。そのためまず职场の人々に『一つ一つの职务の要件を详しく定义すること』に惯れてもらう必要があります。そこで定义された仕事に向いている労働者を探してくる必要もある。滨顿贰础で构筑している地域システムはそれを公司や部署だけに押しつけず、地域で支えることで负担なく行えるようにする仕组みです」。
滨顿贰础モデルで行う职务は多岐に渡ります。これまでに参加した公司のニーズから、たまたま在库のチェックや、文书の电子化、スキャンした名刺の文字データ修正などのオフィスワークが多いのですが、接客や清扫、リハビリ助手、翻訳、デザインなどもあり、论理的にはどのような仕事でも生まれます。公司にとっては、このプロジェクトに参画しても障害者雇用率向上にはつながりませんが、短时间勤务スタッフ、公司の両方からの评判はよいようです。
ソフトバンクの技术部门で働く30代の男性は、ショートタイムワーク制度について同社が绍介したウェブサイトの中のビデオインタビューで制度について満足していると话しています。この男性は统合失调症で、过去、别の职场で週20时间働こうとして体调を崩した経験がありましたが、现在は制度を利用して、週に20时间未満の勤务で、プログラミングや物品整理などの仕事をしています。
「今まで働いていたところでは、病気について隠して働いていました。この制度を利用して働くようになってからは、病気を隠す必要がないことがとても楽です。また、特性にあわせた业务を任せてくれるため、とてもリラックスして仕事ができています」と男性は话しています。
このショートタイムワーク制度を担当するソフトバンク颁厂搁部门の横沟知美さんは、「业务の整理を行い、ショートタイムワーク制度を活用して、スタッフの方に一部业务をお任せすることで、社员がクリエイティブな业务に集中することが可能になりました」と话します。
労働需要とマッチした仕事
「公司や障害者支援関係者からは、终身雇用できるように、超短时间雇用の仕组みを社内につくるべきではないだろうか、と质问される场合もあります」と近藤先生は话します。「しかし、私はそれを第一义にはしないでくれ、と言っています。仕事はその公司内の労働の需要とマッチすべきで、その公司で仕事がなくなったら职もなくなるべきです。配置転换や职务転换をして雇用を継続させることを第一义にしてしまうと、いつの间にか労働者はジェネラリストであることを求められ、その结果、できることとできないことに大きな偏りのある人がまた排除されてしまいます。すると障害者の雇用は、いつまでたっても『特别なこと』という位置づけから抜け出せない。そういうこともあって(公司间の労働者の流动を支援したり、セーフティーネット措置を持っている)自治体を巻き込んでいます」。

2017年夏に開かれたDO-IT Japanのワークショップに参加する生徒。近藤先生は、障害を持つ子供たちが就職という壁によって絶望しない社会を作りたいと話す。© 2018 DO-IT Japan.
近藤先生は障害を持つ若者の中には、人生に希望を持つことが难しいと感じている人も多いと言います。
「将来に梦が持てない、と语る子どもに出会うことは少なくありません。ジェネラリストであることが前提となっていて、强みだけを生かした働き方は难しいと谁もが信じ込んでいたり、週40时间以上、年间12ヶ月连続して安定的に働くことはごく当たり前、としか考えていない社会通念から、そんな絶望が生まれてしまうのかもしれません。社会がそのように固定化された能力観だけに凝り固まっていては、新しい社会参加を生み出すクリエイティビティやイノベーションは生じないでしょう。なのでそこを変えたい。その前提を変えれば、障害のある子供たちも『自分だったら将来こんな働き方ができるかも、だったらこんなことを学びたい』と未来をイメージできます。教育や雇用、ひいては社会のあり方にいちいち絶望しなくてよくなるはずです」。
取材?文: 小竹朝子