人型ロボットから梦を得て、分散型ロボットの世界を拓く。| UTOKYO VOICES 080


大学院新领域创成科学研究科 人間環境学専攻 准教授 福井 類
人型ロボットから梦を得て、分散型ロボットの世界を拓く。
研究室の书棚に「机动警察パトレイバー」のプラモデルが见える。数あるロボットアニメの中で福井がパトレイバーを好む理由は明快だ。
「戦闘のためのロボットではなく、人のために働くロボットだから」
福井は、「人の役に立つロボットを作りたい」という思いからロボット研究者になった。製品の伤をチェックするといった単纯作业や足场の悪いところでの危険な作业&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;人がロボットに代替してもらいたい仕事、ロボットのほうがうまくこなせるはずの仕事は山ほどある。
とはいえ、いま福井が作ろうとしているのはパトレイバーのような人型ロボットではない。
「&濒诲辩耻辞;ちゃんと役に立つロボット&谤诲辩耻辞;を作るには、ほしい机能を一つのロボットに詰め込むのではなく复数のロボットに分散させ、それをうまく统合する『分散?统合型ロボット』のほうがいいはず、と僕は考えているんです」
たとえば鉱山の坑内掘りの现场ではいま、掘削?积込?运搬の3つの仕事を一つの车両で行っている。福井はそれを「掘削?积込」と「运搬」を担う2つのロボットに分け、2つが连动して动くシステムを考案した。それにより生产性が格段に上がることもシミュレーションで确认されている。
「このロボットは建设机械メーカーとの共同研究で、メーカーさんは日本だけでなく世界各国で特许を取得しています。そしてもうひとつ、僕が重视しているのはロボットが性能を十分に発挥できる&濒诲辩耻辞;环境&谤诲辩耻辞;です」
自动车は、舗装された道路や信号などの外部环境が整って初めて速く走れる。そうした环境がなければ、自动车自体をいくら高机能化しても速度は上げられない。扫除ロボットも、机能を発挥するには「障害物の少ない床」という环境が必要だ。
ロボットにはロボットに适した环境がある。人间に适した环境にロボットをもってくるだけではいつまでたっても、人よりもちょっと不器用な、人よりも头の悪いロボットしかできないだろう。
「だから、ロボットが活跃できる&濒诲辩耻辞;环境&谤诲辩耻辞;も、僕が考える分散?统合型ロボットシステムの一要素なんです」
たとえば、床を移動して物を運ぶロボットには、人間にぶつからないよう複雑な制御が必要になり、移動速度も運ぶ物の重量も限られるが、福井がいま開発中の天井にぶらさがるロボットは1.0 m/sという高速なスピードで自在に移動でき、60kgもの物を運べる。
ロボットが作业する空间を人间のいる空间と分离することも「环境作り」ですから、と福井は言う。
人はどうしても、环境を选ばず动く、多机能の人型ロボットを求める。しかし、子どものころにそんな人型ロボットから梦を得た福井は、ロボット研究者として対极の方向に歩みだした。
「人间でも一人のスーパーマンがすべての课题を解决、なんてことは现実には起きないですよね? 人それぞれに得意不得意があり、强みをうまく组み合わせ、弱点を补いあって大きな力を発挥する。ロボットだって同じだと思うんです」
ロボットそのものを追求するためのロボットではなく、ちゃんと人の役に立つロボットを。若きロボット研究者はなにより、&濒诲辩耻辞;人&谤诲辩耻辞;の幸せを考えている。
プラモデルとしてはこの2つのような「パトレイバー」に登场するロボットだけでなく「ガンダム」も作るが、「ロボットとしては、空を飞べる戦うガンダムより、地上で働くパトレイバーに共感します」。
「机械や础滨によって雇用が夺われる、など、技术は人を幸せにするとは限らないという考え方もありますが、これまで人间の生活をより良いものに変えてきたのは技术ですし、技术はそのためにあると僕は信じています」

Profile
福井类(ふくい?るい)
2004年东京大学大学院情报理工学系研究科修士课程を修了后、叁菱重工业へ。2006年に退社して同大学院同研究科博士课程に戻り博士号取得。同研究科助教、工学系研究科特任讲师を経て2016年より现职。机械工学と情报科学を融合した「分散?统合型ロボットシステム」による新しい研究领域を开拓している。代表的な研究に、建设?鉱山机械システムや自动队列走行システム、ウエアラブルな入力デバイスなど。产学共同研究にも积极的に取り组んでいる。
取材日: 2019年11月5日
取材?文/江口絵理、撮影/今村拓马