単原子层を积み重ねて、未知の量子输送现象に挑む。| UTOKYO VOICES 075


生产技术研究所 基礎系部門 教授 町田友樹
単原子层を积み重ねて、未知の量子输送现象に挑む。
町田の研究室では日々、原子一つ分の厚みしかないシート状の物质「単原子层」をさまざまな组み合わせで积み重ねている。単原子层は、重ね方次第でこれまで谁も见たことがない素材になる。町田が探している“宝”は、その薄い薄い膜の中にある。
たとえば、炭素原子の単原子层「グラフェン」は、炭素原子が多层に重なった「グラファイト」とは本质的に异なる物性が现れる。さらに単体では超伝导にはならないが、なんと、1.1度だけずらして重ねると超伝导になるという。単原子层を积み重ねた构造(薄膜ヘテロ构造)には时に、これまでの常识では考えられなかったことが起きるのだ。
「物质の中で电子などの量子が移动する様子を『量子输送现象』といいますが、超伝导はその一つ。1980年に発见されて以来、热い注目を集めている『量子ホール効果』と呼ばれる现象もそうです。この量子输送现象に兴味があるんです。さまざまな薄膜ヘテロ构造の中の量子の动きを観察して、まだよくわかっていない物理现象の理解や、未知の现象の発见につなげたいと思っています」
物理学の最先端で研究にいそしむ町田だが、高校を卒业するまでは数学者になりたいと考えていた。
「でも、东大に入ったら自分は数学じゃまるで胜负にならないことに気づいて、物理学に“逃げた”んです(笑)。物理の実験なら、头の切れだけではなくて、一日16时间でも実験を続けられる体力とか、手先の器用さとか、経験の蓄积などのいわば『総合力』で胜负できると思って」
ただ、学部を卒业したものの、修士课程でなかなか成果が出ない。博士课程に进む自信が持てずに就职したが、すぐにアカデミアに戻りたくなって博士课程に入り直した。「振り返れば、逃げて逃げてここまでやってきました(笑)」。
しかしそのおかげというべきか、これまでの研究领域は低次元电子系、超伝导、半导体、スピン、光、量子ビットなど多岐にわたる。この多様性が结果的に町田の武器となり、物理学者としての「総合力」を支えている。
いま力を注いでいるファンデルワールスヘテロ构造の研究では、グラフェンにグラフェンを重ねるだけでなく、グラフェンに超伝导素材や半导体を重ね合わせるとまた别の新たな现象が観察できる。これまでになかった机能をもつ素材も生まれるかもしれない。
「グラフェンと强磁性体を组み合わせることもできます。磁性のもととなっているのは电子のスピン。以前のスピンの研究がここで生きています」
さまざまな组み合わせを试すうちに、もしかしたら、量子ホール効果に匹敌する、世界中の物理学者があっと惊くような现象も出てくるかもしれない。「宝探しみたいなものです」と町田は笑う。
头の良すぎる人には、宝探しはおそらく向いていない。しかし町田は「泥臭さとフットワークの良さが僕の身上みたいなものですから」と、寄り道も撤退もいとわず、素材や人との偶然の出会いを味方にして、宝探しの旅路を飘々と歩んでいく。
量子输送现象を见るにはグラフェンなどの物质を絶対零度(约マイナス273度)近くまで冷やす必要がある。非常に高额な设备だが、博士研究员の顷に购入して以来ずっと使っている爱机。
元サッカー日本代表の中山雅史选手は泥臭さを体现する人物だと思う、と町田は言う。光り辉くセンスや美しいテクニックの持ち主ではないが、运动量やメンタルの强さなど持てるすべてを武器にして泥臭く点を取る。「そんな研究者でありたいと思っています」。

Profile
町田友树(まちだ?ともき)
1994年東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻修士課程修了、1995年までNTT光エレクトロニクス研究所に勤務。1998年東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻博士課程修了。科学技術振興事業団CREST研究員、さきがけ専任研究者を経て2004年東京大学生产技术研究所助教授(2007年准教授に職名変更) 、2017年より現職。単原子層を組み合わせた複合原子層構造における量子輸送現象の研究を行っている。ブロックを積むように原子層を自在に積み重ねるロボットシステムも開発中。
取材日: 2019年1月29日
取材?文/江口絵理、撮影/今村拓马