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「0」から「1」をつくり出す研究で电子スピンの可能性を拓く。| UTOKYO VOICES 070

掲载日:2019年7月18日

UTOKYO VOICES 070 - 大学院理学系研究科 物理学専攻 准教授 林 将光

大学院理学系研究科 物理学専攻 准教授 林 将光

「0」から「1」をつくり出す研究で电子スピンの可能性を拓く。

电流の正体が电子そのものの流れであることは谁でも知っているが、磁性の正体が电子の「スピン」だと知る人は少ない。しかし、スピンは物理学や工学の世界でも产业界でも、热い注目を集めるトピックだ。

博士课程の时にスピン研究の第一人者スチュアート?パーキン博士のもとで研究した林は、スピンを説明するのは难しいのですが、と断りつつこう表现する。

「ごく简単にいえば、ある物体でスピンの向きがそろっていればその物体は磁石になる。向きがバラバラならその物体は磁性をもちません。今のデジタル机器は、超小型の磁石の向きが上か下かでデジタル情报の『0』か『1』が决まっています」

パーキン博士は、スピンの性质を利用してつくる次世代磁気记録媒体のコンセプトを提案していた。実现すればこれまでとは桁违いの容量を记録でき、安定的に省エネで読み书きできる。しかしスピンは目で见ることができないミクロの存在。コントロールするのは非常に难しい。

林の研究テーマは、これを现実のものにすることだった。博士课程修了后には滨叠惭の研究所に入り、パーキン博士とともに研究を続けた。そして2008年、博士の提唱した磁気记録媒体のコンセプトを実証することに成功。

この画期的な成果は『サイエンス』誌に掲载され、滨叠惭も世界に向けてアピールした。けれど当时を振り返る林自身の口ぶりは「僕はパーキンさんのアイデアを実証しただけですから」とあっさりしたもの。

この考え方はパーキン博士の薫陶によるところが大きい。「博士から言われていたのは、既存の成果を改善する研究より、谁もやっていないことに挑戦すること。まだ自分が実践するところまではいっていませんが」

帰国して物质?材料研究机构の研究员となり、磁気记録などの研究を続けてきた林は、数年前から东大にも研究室を构えた。「スピンをどう利用して优れた记録デバイスを作るか」から、より基础研究に近い「スピンの性质をより深く理解し、その量子力学的な効果を使うとどんなことができるかを探る」研究へと手を広げつつある。

たとえば、スーパーコンピューターの性能をはるかに凌驾する量子コンピューターの研究において、スピンを使った量子コンピューターの実现につながる成果は超伝导や光を用いたものに比べてまだ少なく、新たな知见が待たれている。

「そのほか、スピンを使って电気を生み出すという研究も世界中で始まっていますし、僕自身は、光とスピンをうまく使って、新しい情报通信技术を生み出せないかとも考えています」

スピンで量子力学的な効果を出すには絶対零度(约-273度)近くまで冷やす必要があるが、林はこれを室温で実现したいと考えている。学生には「无理じゃないですか」と言われたと苦笑いしつつ、「でも、やってみなくちゃわからない」と言い切る。1を1.1にする研究ではなく、0を1にする研究を。落ち着いた语り口の向こうに、静かな戦意がほの见える。

写真:デスク

Memento

「毎日使うものなので。机が広くて使いやすいです」

直筆コメント:「楽」

Maxim

「研究は、『楽』しくないと続けられない。そして、『楽』をすることも大事。実験系の学问は时间のかかる作业を地道にこなすものだと思われがちですが、なるべく『楽』をして、その分考えることも必要かなと思います」

Profile
林 将光(はやし?まさみつ)

2002年东北大学大学院工学研究科応用物理学専攻修士课程修了。2007年スタンフォード大学大学院博士课程修了后、滨叠惭アルマデン研究所で博士研究员に。2008年より独立行政法人物质?材料研究机构主任研究员。2016年より现职。电子や光のスピンにかかわる物理の研究を行っている。2014年サー?マーティン?ウッド赏、2015年国际纯粋?応用物理学连合(滨鲍笔础笔)若手科学者赏、2016年文部科学大臣表彰若手科学者赏などを受赏。

取材日: 2019年2月13日
取材?文/江口絵理、撮影/今村拓马

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