光合成研究から次世代太阳电池の开発へ。光エネルギー変换にかけた35年。| UTOKYO VOICES 069


大学院総合文化研究科 広域科学専攻 広域システム科学系 教授 瀬川浩司
光合成研究から次世代太阳电池の开発へ。光エネルギー変换にかけた35年。
自宅の庭ではミカン、ブドウ、サクランボの木が毎年実をつける。太阳エネルギーの恵みを実感する色彩豊かな光景に瀬川は目を细める。「実のなる植物の成长を见るのが楽しいんです」。
子供の顷にも、庭で野菜を育てていた。植物は太阳エネルギーを利用して、水と二酸化炭素から様々な有机化合物をつくり出す。その光合成の见事な技に、少年时代の瀬川は魅せられた。
1970年代にオイルショックが起きたときには、将来は日本のエネルギー问题の解决に贡献したいという思いが生まれた。植物のように太阳エネルギーを上手に利用できるようになれば、エネルギー问题と环境问题の同时解决に繋がる。光合成とエネルギー。后から振り返れば、この二つが研究者としての原点だった。
京都大学に进学したときには研究者になることなど考えていなかったが、大学2年の时に所属学科の福井谦一が日本人として初めてノーベル化学赏を受赏。日本の化学のレベルの高さを知り、心が动いた。
大学院に进学すると、「本多-藤嶋効果」で知られる光化学の第一人者、本多健一に师事し、光触媒で水素をつくる研究や光合成のメカニズムを探る研究などに力を注いだ。京大での助手を経て东大で助教授に着任し、2001年、本多研究室を引き継いだ藤嶋昭の研究プロジェクトへの参加を机に「世の中の役に立つ光化学の研究」を意识するようになった。
当时も今も、世の中で最も広く使われているのは结晶シリコンを使った太阳电池だが、シリコン系はコストの高さが课题。ほかの素材を使った太阳电池で有望なものの一つが、光を吸収した色素が电子を受け渡して発电する「色素増感太阳电池」だ。
光エネルギーで栄养をつくる光合成と、光エネルギーで电気をつくる太阳电池。瀬川の中で光合成と発电が结びついた。瀬川はここから、本格的に太阳电池の研究に足を踏み入れる。
「太阳电池の决定的な弱点は、光が遮られた途端に発电できなくなること。でも植物は太阳が当たらない夜でも活动しています。昼间につくったエネルギーを贮める仕组みを持っているからです」
それにヒントを得て、瀬川は2003年、発电も蓄电もできる太阳电池を世界で初めて作り上げた。しかもシリコン系太阳电池よりはるかにコストが低く、製造プロセスも简便で、色や柄をデザインでき、ステンドグラスのようにガラスに贴ることもできる。
ただし色素増感太阳电池の変换効率はシリコン系に比べると低い。この课题を解决すべく、2009年に国の研究プログラムの中心研究者に选ばれた瀬川は、より高性能な太阳电池を开発するプロジェクトを立ち上げた。
2012年、このプロジェクトのメンバーが、色素増感太阳电池から派生した「全固体ペロブスカイト太阳电池」を発表。これまでの太阳电池を遥かに超える可能性を持つ画期的な太阳电池だ。それを机に、この分野の研究に火が付いた。
瀬川は2015年にはペロブスカイト太阳电池を用いたセルで世界最高効率をたたき出したが、その后すぐに海外のグループに抜かれ、いまも炽烈な研究开発竞争を続けている。
変换効率はすでにシリコン系太阳电池に迫るレベルだが、さらなる高性能化を目指すとともに、セシウムなどの希少で高価な物质や铅などの有害な物质を别の物质に置き换えようとしている。
「光が当たるだけで植物が育ち、実をつける」--子どもの时に感じた光合成への惊きは瀬川の中で种となり、学生时代に芽を出して、いま太阳电池研究という木に育った。瀬川の生み出す一つひとつの成果がその枝になり、果実は世の中の人々へと手渡されていく。
これまでに作った色素増感太阳电池の数々。紫阳花柄のパネルは蓄电机能を持つ太阳电池で、叶の部分で発电し、花びら部分に蓄电する。花びらに电気が蓄えられると色が浓くなり、放电すると白くなる。
瀬川が京都大学に入ってまもなく、同大学の福井谦一がノーベル化学赏を受赏。授业が终わった后に、自身の教科书にサインを頼んだ。その时に福井氏が记したのがこの一言だ。「私も、初志を大切に研究していきたいと思っています」。

Profile
瀬川浩司(せがわ?ひろし)
1989年京都大学大学院工学研究科分子工学専攻博士课程修了。京都大学工学部教助手、东京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻助教授を経て、2006年东京大学先端科学技术研究センター教授に。2010年~2016年东京大学先端科学技术研究センター附属产学连携新エネルギー研究施设长。2016年より现职。この间、2012年より现在まで东京大学教养学部附属教养教育高度化机构环境エネルギー科学特别部门长。ペロブスカイト太阳电池(有机金属ハライド太阳电池)や量子ドット太阳电池など次世代太阳电池の研究のほか、环境とエネルギーの教育を幅広く行っている。2015年から产学连携の狈贰顿翱プロジェクト「ペロブスカイト系革新的低製造コスト太阳电池の研究开発」のプロジェクトリーダーを务める。2019年科学技术分野の文部科学大臣表彰科学技术赏(研究部门)受赏。
取材日: 2019年2月12日
取材?文/江口絵理、撮影/今村拓马