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武器は底抜けの楽観。分子をデザインして世界が惊く素材を作る。| UTOKYO VOICES 063

掲载日:2019年5月30日

UTOKYO VOICES 063 - 大学院工学系研究科 化学生命工学専攻 教授 相田卓三

大学院工学系研究科 化学生命工学専攻 教授 相田卓三

武器は底抜けの楽観。分子をデザインして世界が惊く素材を作る。

博士课程に进んで一年半。失败に失败を重ねていた実験が偶然うまくいき、解析が终わったときのことだった。

惯れ亲しんだ测定装置だから、いつもなら解析が终わったサンプルは手元を见なくても装置から取り出せる。しかし、そのときはどうしてもサンプルをつかめなかった。なぜだろうと思って目をやると、自分の手がぶるぶる震えていた。「そんなに感动してたのか!」。自分で自分にびっくりした。

「それまで感动なんてしたことがない人间でしたから。学生运动直后の世代というのもあって、かなり醒めていたんです。だから、『そうか、研究でこんなに感动できるんだったら俺は研究者になろう』と大学から下宿に帰る自転车の上で胜手に决めてしまいました」

単纯で楽天的。「その时、『研究者になったらなったで大変だろうな』などとは考えなかったんですよね。そもそも将来のことはまったく考えていなかったし」。刹那的ですらある。

高分子をデザインして、これまでにない机能をもった素材を作るのが相田の研究だ。水に3种类の粉末を少量混ぜるだけでできるプラスチックやゴム、割れても元に戻るガラスなど、まるで厂贵のような素材を次々に作り出し、世界を惊かせている。

「でもこれまでの大きな成果はほとんど、最初に『これを作ろう』と思い描いていた素材とは违うものなんです(笑)」

研究テーマのひとつに、生体内でたんぱく质や顿狈础などをくっつける「糊」の开発がある。分子レベルの接着剤なので「分子糊」と呼んでいるが、ある时「分子糊」の新バージョンを设计していた学生が、その途中で経由する物质の破片同士を押し付けていたらくっついてしまった、と相田にちらりと话した。

柔らかくベタベタした素材ならばなんの不思议もないが、実験でできたのは表面が固くてサラサラしたガラス状素材。押し付けておいただけでくっつくというのは奇妙な话だった。相田は、そこに「何かあるぞ」と感じた。そのひっかかりから生まれたのが&濒诲辩耻辞;割れてもなおるガラス&谤诲辩耻辞;だった。

相田は、最初に决める研究のゴールは动き始めるためのきっかけに过ぎない、と言う。大事なのは途中で偶然见つかる何かを见逃さないこと。日常の中で无数に起きる出来事からその「何か」を感知するセンサーを働かせることだ。

「実験でどうもおかしいな、困ったな、ということが起きた时に、トラブルだと思って最短距离で解决してしまうとなかなか幸运には出会えない。でも、メガネをいくつも持っていれば、同じ现象を别のメガネで见た时に『もしかしたら面白いことが起きているかもしれないぞ』と思えることがあるんですよね」

相田の研究は高分子化学という一领域にはとうてい収まらない。化学と生物、化学と物理など、2つ以上の领域にまたがって常に复数のメガネを掛けかえながら幸运を拾いあげてきた。

现実的な人からすれば、偶然の些细な出来事から大きな成果を生み出すという研究スタイルは心もとなく见えるかもしれない。しかし相田は、「きっといいこと起きるよ」とおおらかに构え、その时のために备えている。

「『研究者になる!』と决めた时の実験も、まったく偶然の成功でしたから」。この楽観が千载一遇のチャンスを运んでくる。相田は、それを见逃さない。

小物:初代マッキントッシュ

Memento

初代のマッキントッシュ。「スティーブ?ジョブズはこの小さなパソコンを世に出すことで『不可能を可能にする瞬间』を见せてくれた。できそうもないことを最初にやってみせる人の存在が、后に続く人の挑戦を支えるのだと思います」

直筆コメント:Chance favors the prepared mind.

Maxim

「Chance favors the prepared mind. チャンスは、自分にきっと何かいいことが起こるぞと期待し、準備をして待っている人のもとにやってくる。フランスの化学者ルイ?パスツールの言葉です」

プロフィール画像

Profile
相田卓叁(あいだ?たくぞう)

1979年横浜国立大学卒业、1984年东京大学大学院工学研究科博士课程修了。东京大学大学院工学系研究科助手、助教授を経て、1996年より现职。2000年に贰搁础罢翱プロジェクトリーダー(~2005年)、2009年から理化学研究所でもグループを运営。2013年より同研究所创発物性科学研究センター副センター长を兼任。水から作るプラスチックや自己修復ガラスなど革新的なソフトマテリアルの研究を行い、紫綬褒章、日本学士院赏など多数の赏を受赏。

取材日: 2019年1月8日
取材?文/江口絵理、撮影/今村拓马

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