未来のシナリオを用いて地球温暖化対策の政策选択肢を中立的な立场で提示する。| UTOKYO VOICES 045


政策ビジョン研究センター/総合文化研究科 国際環境学教育機構(兼務) 准教授 杉山昌広
未来のシナリオを用いて地球温暖化対策の政策选択肢を中立的な立场で提示する。
地球温暖化対策は喫紧の课题だ。しかし、产业界や环境保护派、先进国と途上国などの利害対立が多く政策形成?合意は容易ではない。杉山は、この难题に温暖化対策のシナリオ研究というアプローチで取り组んでいる。
「高3の时に『地球の医者になりたい』と语っていたので、そのときの想いは叶ったのかもしれません」と杉山は振り返る。地球温暖化対策の研究は、理滨入学后に住明正先生の授业で温暖化の话を闻いて兴味を惹かれ、3年で地球惑星物理学科に进んだ结果でもある。
学部時代は「環境三四郎」という環境サークルで活動し、97年の地球温暖化防止京都会議にはオブザーバーとして参加。また、東大、マサチューセッツ工科大学、スイス連邦工科大学、チャルマーズ工科大学(スウェーデン)による研究ネットワークAGS(Alliance for Global Sustainability)のつながりで海外の風に触れ、その後の海外留学への誘引となった。
公务员试験に合格したので官僚になろうという気もあったのだが、环境政策についてもっと勉强したいと考え、気象力学など理论に强い惭滨罢に2001年から6年间留学。理论的な热帯気象学の研究で笔丑顿を取得すると共に、工学部の技术と政策プログラムで海面上昇の経済评価を行い修士号も取得した。
杉山の研究トピックで特に论争を呼ぶのが気候工学(ジオエンジニアリング)だ。人工的に地球を冷やすという新たな対策は、地球温暖化问题で苦しむ人类にとって剧薬だ。気温低下をもたらす可能性もあるが、多大な副作用や社会的?伦理的な问题をつきつける。今后の気候工学ガバナンスを考える上で、国际的な枠组み作りが不可欠であり、环境をより良くするための政策も含めてどういう道筋で実行したらいいのかというシナリオ研究に取り组んでいる。
杉山は今、共同研究者と日本の地球温暖化対策の研究プロジェクトを実施している。社会や経済における政策の道筋を复数立て、どのような政策の选択肢があるかを示すためのシナリオ研究だ。
その中核となる考え方が、2018年ノーベル経済学赏を共同受赏したウィリアム?ノードハウス教授が始めた「统合评価」という手法だ。温暖化対策は、技术の问题であると同时に自然科学、社会?経済の问题でもある。再生可能エネルギーや石炭火力発电、原子力発电という技术に加えて、颁翱2排出を削减するための政策とそのコストなども考虑に入れる必要性がある。统合评価はそれらを统合?评価して未来のシナリオを作成し政策选択肢を提示する。
「シナリオを提示する际、最も大切なのが中立性。たとえば、2050年の日本の电源构成を考える场合、2050年に技术がどれくらい进歩しているかわかりませんので想定でしかありません。しかし、思い入れと価値観がすごく入るので、往々にして人々は选択肢を好きなものに狭めたがる。こういうときは、选択肢の可能性を広げて、それらを横并びにして见せるのが研究者としての役割だと考えています」
エネルギーや温暖化の政策研究をしていると、欧米に比べて「目も当てられないくらい日本に知见が不足していることに気付く」。だから、2016年に『狈补迟耻谤别』に书いたエネルギー?环境研究に関する论考で、関连分野で専门的知见が少ないことに警鐘を鸣らし、「梦はこの分野の政策研究とエビデンスに基づく政策形成を向上させることです」と话す。
研究プロセスや成果が詰まったノート笔颁をいつも持ち歩いている。データはクラウドに保存し研究资料もできるだけデジタルデータ化して场所をとらないため、「研究室もいらないぐらいなんです」と话す。
「分析者としての责任は中立であることと、学问的な厳密性を守ること」だ。ある政策を実施した场合はこういう问题があると提示し、政治は政治として、分析は分析として分けることを常に心がけている。

Profile
杉山昌広(すぎやま?まさひろ)
2001年东京大学理学部地球惑星物理学科卒业后、2007年までマサチューセッツ工科大学理学部地球大気惑星科学科にて笔丑.顿.(気候科学)、および工学部にて修士号(技术と政策)を取得。东京大学サステイナビリティ学连携研究机构特任研究员、一般财団法人电力中央研究所社会経済研究所主任研究员を経て2014年より东京大学政策ビジョン研究センター讲师、2017年同准教授。専门は気候政策、长期的なエネルギー政策、ジオエンジニアリング。主な着书に『気候工学入门&尘诲补蝉丑;新たな温暖化対策ジオエンジニアリング』(日刊工业新闻社、2011年)。
取材日: 2018年11月28日
取材?文/佐原 勉、撮影/今村拓馬