物理学の视点から、先端构造学研究の进化と深化に贡献。| UTOKYO VOICES 037


大学院医学系研究科 教授 Radostin Danev(ラドスティン?ダネブ)
物理学の视点から、先端构造学研究の进化と深化に贡献。
ダネブ家は、両亲ともに物性物理学者という研究者一家だった。彼は、早くも物心ついた顷には「自分も研究者になるのだ」と决めていた。幼时期から、コントローラーでレール上の电圧を変えることで変速する鉄道模型に魅せられ、さまざまな「実験」に挑戦。电极をスパークさせて家のブレイカーを落とし、家族を惊かせたこともあったと笑う。
1997年、ブルガリア?ソフィア大学大学院物理学研究科?修士课程修了。指导教官から、「电子顕微镜研究の国际的権威である永山国昭博士から、研究员募集の国际オフォーがきている」と打诊され、キャリアアップを目指して日本行きを即决。翌年から、文部省奨学生として、日本の全大学の共同利用机関である生理学研究所(爱知県冈崎市)で共同研究メンバーに加わった。
「当时日本语はまったくわかりませんでしたが、研究所内のやりとりは、全て英语でしたので特に不安やとまどいはありませんでした」
在任中に、研究室秘书の日本人女性と结婚。その后、海外での研究生活を経験しながらも、日本を终の栖家にしようと决めた。
构造生物学や细胞生物学などの先端研究分野では、试料を液体窒素で低温环境下に置き、电子线を用いてより高精细度な解析を行うクライオ电子顕微镜が活用されている。しかし、电子线はサンプルを通过するだけでなく、反射や遮蔽されて进行方向が変わってしまうものもあり、画像のコントラストを落としたり、ノイズが発生したりするなど、解析精度を妨げてしまうのである。そこで、电子线の波面の差(位相のズレ)を利用し、明暗をはっきりさせる役割を担うのが、彼の研究テーマである「位相板」だ。
「光学顕微镜でも活用されてきた位相板の基本セオリーはシンプルです。しかし、実际にクライオ电子顕微镜への适用を図る际にはさまざまな工夫や配虑が求められます」そう语る彼のグループが开発した「ボルタ位相板」は、位相版にカーボン薄膜を活用することで精度向上に成功した。
例えば、タンパク质の构造やそれに适応した受容体の形态を探り、目指すタンパク质に薬の分子を结合させてその挙动を変化させることができれば、さまざまな疾病を治疗することができる。そこで、今や医薬品开発最前线では、高精度な顕微镜によるタンパク质の解析が不可欠だ。「ボルタ位相板」は、画像イメージのコントラストやノイズ除去のパフォーマンスを格段に向上させ、创薬にも大きく贡献したのである。
高い集中力が求められる研究に打ち込むダネブのイマジネーションは、24时间ホットスタンバイ状态だ。寝入りばなや睡眠中に新しいアイデアが浮かぶことも多いので、常にベッド脇にスマートフォンを置き、アイデアが浮かんだらすぐにメモを打ち込むのである。その一方で、家に帰れば6歳の娘と游んだり、一绪に公园に出かけたりするのが何より楽しみだ、と子烦悩な一面も垣间见せる。
「娘が将来何を目指すのか&丑别濒濒颈辫;&丑别濒濒颈辫;それは彼女次第です。ただし、本人のやる気と可能性の开花を最大限に支援する姿势は、惜しまないでいたいと思います」と语る眼差しは、どこまでも优しい。
かつての电子顕微镜は、画像イメージをそのままデジタルデータとしてキャプチャすることができなかったので、自ら银塩カメラで撮影していた。そのフィルムをチェックするのに、ルーペは手放せない必需品だった。
Do what you must do, The result will come sooner or later.
(成すべきことを成せ。结果は、やがてついてくる)
研究には「必ず达成するのだ」という坚い信念と、粘り强く地道な努力の积み重ねが大切だ。「何よりも、努力を継続する姿势が大切です。その努力は、必ず报われるはずだからです」

Profile
Radostin Danev(ラドスティン?ダネブ)
1997年ブルガリア?ソフィア大学大学院物理学研究科?修士課程修了。1998~2001年総合研究大学院大学(生理学研究所)博士課程。2006年自然科学研究機構 生理学研究所助教となり、2007年には科学技術庁長官賞を受賞。2011年MPIB(Max Planck Institute of Biochemistry?独)分子構造生物学グループリーダー就任。同年米国顕微鏡学会バートンメダル受賞。2017年独電子顕微鏡学会からエルンスト?ルスカ賞を贈られ、2018年春に東京大学大学院医学系研究科(医学部)特任研究員として再来日し、同年秋より教授に就任。
取材日: 2018年11月7日
取材?文/太田利之、撮影/今村拓马