谁も知らない生き物を求めて 本邦106年ぶりのテヅルモヅル新种発见に至るまで

テヅルモヅルという生物を知っていますか?
ウニやヒトデと同じ棘皮动物で、细长く何回も分岐した腕が神経细胞のようにも、植物の枝のようにも见えます。无数の触手を络ませるように动かしながら海中を滑らかに移动する様子は幻想的でさえあります。
クモヒトデ网ツルクモヒトデ目に属する深海性の生物で、その不思议な名前の由来は近畿地方の方言で「さまざまな议论があって结论が出ない状态」という意味だと言われていますが、蔓がもつれるように动く様子を表しているとも言われています。ただその生态はほとんど知られていません。大学院理学系研究科の特任助教、冈西政典先生(分类学)は现在、テヅルモヅル研究では世界でほぼ一人といえる専门家です。
世界各地での地道な标本観察が実を结び、このたびテヅルモヅルの新种発见につながりました。日本からのテヅルモヅルの発见は106年ぶり。発见の元となった标本に、昭和天皇が相模湾でご採取され国立科学博物馆に保存されていたものが含まれていたこともあって、2018年3月の论文発表は広く报道されました。
テヅルモヅルは形态によって细かく分类されます。今回の新种はツルボソテヅルモヅル属としては世界で6种目。体の中心にある盘の大きさは直径5.3センチで、腕を伸ばすと30センチぐらいの大きさになりますが、この种を见分ける特徴は、体全体に见られる、直径わずか0.1ミリほどの微小な棘です。その棘にちなんで「トゲツルボソテヅルモヅル」と命名されました。
ネッシー伝説が分类学研究の原点?
冈西先生(34)は、高知県の豊かな自然に囲まれて育ち、子供の顷から、スコットランドのネッシーやカナダに伝わるオゴポゴと呼ばれる巨大水栖獣など、いわゆる未确认生物にまつわる话が大好きだったといいます。大学2年のとき、研究室绍介のイベントで初めて分类学という学问に出会い、「直感的」に専门にしようと决意しました。
「小さい顷から、幻の生物を追う、とか巨大鱼を探して、といった内容のテレビ番组が好きでした」と冈西先生は话します。「高校のときは自分の未确认生物への情热を学问にできると思っていなかったので、大学で分类学を知ってビックリしました。珍しい生き物が见られる、楽しそうだと思って选びました」。
しかし、分类学の中でなぜテヅルモヅルを研究対象に选んだのでしょうか?
竞争相手のいない领域
「その当时、大学の指导教官に図鑑を渡されて、研究する种を选びなさいと言われたのですが、(テヅルモヅルが所属する)クモヒトデは、动きがやわらかい感じもありつつ、硬い感じもあって、见た目のカッコよさを感じたんです。でも単纯なカッコよさでいうと、(カニやエビなどの)甲殻类はやっぱりカッコいいんですよ。ただ、僕はあまのじゃくなところがあって、そのとき研究室で甲殻类をやっている人が多かったので、それに近いけれども违う动物がないかな、と思ってクモヒトデを选びました」。
冈西先生は北海道大学を卒业后、クモヒトデ分类学の研究で知られ,今回の新种発见论文の共着者でもある大学院理学系研究科の藤田敏彦教授の门を叩きます。以来、次々と新种を発见し、昨年秋、海から「歩いて数分」の神奈川県叁浦市の叁崎临海実験所に特任助教として着任しました。
知识がひらめきを呼ぶ
これだけコンピュータやインターネットが発达した现代においても、分类学者にとって大事なのは头の中に蓄积された知识だと冈西先生は言います。
「僕らって研究を始めると、最初の数か月はずっと文献をコピーしているんです。文献をずっと読んで、ああ、こういう种があるんだ、というのを覚えます。そのあと、実际の标本と突き合わせていくんですが、最初は全然わからないんですよ。採れたこのクモヒトデは一体何なんだろう、というところから始めて、持っている标本が新种かどうかわかるまでに1年ぐらいかかります。それが、ある时点から急にわかるようになる、というかひらめく感じが出てきます。常に头の中でデータベースが构筑されていく感じです」。
博物馆もフィールドワークの现场
クモヒトデの研究者にとって、フィールドワークの舞台は海とは限りません。深海性の动物なので、研究者が実际に调査船などに乗って採集することは容易ではありません。ところが、博物馆に行くと、谁かが何十年も前に採集したけれどもまだ名前のついていない种の标本がたくさん保存されているといいます。そこは研究者にとっては宝の山のようなもの。冈西先生も博物馆に赴いてそうした标本を観察することが楽しみだと言います。また、最近は顿狈础解析も进んできています。
「世界各地の博物馆に行って(未整理の标本を)『见せてくれますか?』と言ったら大体みんな见せてくれて、そこに新种がいっぱいいる。博物馆と交渉して标本の一部を切り取らせてもらって顿狈础解析をさせてもらうこともあります」。
3月の新种発见発表は、博物馆に保存されている标本の学术的な価値を改めて世に知らせる结果になりました。
今后は、分类を続けつつもテヅルモヅルの生物学的な研究を深めたいと语ります。
「テヅルモヅル类ってものすごく研究が进んでいないんです。何をどうやって食べているとか、子供はどうやって生きていくのか、どんなふうに腕が分岐していくのか、といったことについてはまったく何も调べられていない。叁崎临海実験所はテヅルモヅルを饲育できる环境があるので、その状况を利用して、生殖発生だとか、分岐メカニズムだとか、そういった生态を调べていきたいと思っています」。
取材?文:小竹朝子