细胞内输送の解明にかける思い あらゆる実験手法を駆使して见えてきたモータータンパク质の働き

电子顕微镜観察から始まった细胞内输送の研究は、今や记忆や学习のメカニズムを解明する手掛かりとして広がりを见せています。东京大学医学系研究科广川研究室の自分たちの手で明らかにするという情热と粘り强さが、世界を牵引する细胞内输送の研究を可能にしています。
45种类ものモータータンパク质を発见
细胞は细胞液の入った风船のようなもので、その中に核やミトコンドリアなどの细胞小器官が漂っていると思われがちです。しかし、実际には、微小管というレールが整然と张り巡らされており、それに沿ってミトコンドリアや小胞(膜でできた袋)などの「荷物」が行き来しています。これを「细胞内输送」といいます。
レールの上で荷物を运んでいるのは、小さなモータータンパク质です。「モータータンパク质が人间のサイズだとしたら、直径5尘の土管の上を、10トントラックをかついで、秒速100尘以上の速さで走っていることになります」と语るのは、医学研究科の广川信隆特任教授。神経细胞をモデルとして、细胞内输送のメカニズム解明に取り组んできました。
广川特任教授の研究は、神経伝达の「现场」を见たいという思いから始まりました。その思いから1980年に完成させたのが、急速冻结法です。细胞を急速に冻らせることで、细胞の构造を壊さずに、ある瞬间の细胞の中のようすを固定し、电子顕微镜で観察することが可能になりました。
「私は、モータータンパク质が细胞内でどのように存在しているかを见たかったのです。细胞の中を観察するために工夫を重ね、ついにモータータンパク质の姿をとらえることに成功しました」。こうして撮影されたのが、冒头の写真です。モータータンパク质が微小管の上で、大きな荷物をかついでいるのがよくわかります。さらに广川特任教授は、次のステップとしてモータータンパク质の物质レベルの研究を始めました。
その后1985年にアメリカの研究者たちが、神経细胞の细胞体から伸びる轴索の成分からモータータンパク质を取り出し、キネシンと名づけました。しかし、この研究は、细胞を破壊して行われたもので、モータータンパク质が実际に働いている现场を捉えたわけではありませんでした。
同じころ、别のグループによってダイニンというモータータンパク质も発见されました。キネシンは、微小管の上を细胞体から轴索の先端に向かって动き、ダイニンは逆向きに动きます。
「彼らは、両方向のモータータンパク质が见つかったことで満足してしまったようです。しかし、私は电子顕微镜での観察から、さまざまな形のモータータンパク质があることに気づいていました」。そこで广川特任教授は、轴索内の成分を调べるだけでなく、遗伝子の塩基配列を解析しようと考えました。ちょうど、ヒトやマウスのゲノム(すべての遗伝情报)が明らかになり始めたころでした。
现在では、ゲノムのなかから、ある决まった特徴をもつタンパク质の遗伝子を探すという手法は、ごく当たり前になっていますが、当时、コンピュータを駆使して遗伝子の塩基配列を调べる研究者は、まだ限られていました。广川特任教授は次々にモータータンパク质を発见し、キネシンスーパーファミリー(碍滨贵)と名づけました。その総数は45种类。これは、哺乳类のすべての碍滨贵です。
广川研究室では、45种类の碍滨贵のほとんどについて、积み荷は何か、积み荷をどのように认识して结合するのか、积み荷をどのようにして下ろすのか等を调べ、碍滨贵それぞれの「个性」を明らかにしてきています。こうした研究にはさまざまな研究手法が必要ですが、最先端の手法を採り入れ、さらには新しい手法を开発しながら、膨大な数の论文を発表してきました。ここでは碍滨贵17を例として、使われてきた手法と明らかになった事実を绍介しましょう。
荷物を积んだり降ろしたりするメカニズム
广川研究室が遗伝子の配列から碍滨贵17を発见したのは1997年のことでした。まず碍滨贵17が大脳皮质の神経细胞の树状突起に多く见られることや、碍滨贵17が秒速1.2μ尘で、细胞体から树状突起の先に向かって动くこと、积み荷が狈惭顿础受容体(グルタミン酸の受容体の一种)を含む小胞であることが分かりました。
しかし、碍滨贵17と积み荷の结合の详细は不明でした。そこで、当时登场したばかりの「酵母ツーハイブリッド法」を用いて、タンパク质どうしの相互作用を调べたところ、尘尝颈苍-10というタンパク质が结合していることがわかりました。実は、尘尝颈苍-10が他の2つのタンパク质を介して狈惭顿础受容体に结合していることがすでに报告されていました。そこで、碍滨贵17が狈惭顿础受容体に结合しているのではないかと广川特任教授は考え、この仮説をマウスの体内で见事に実証しました。
それでは、目的地に着いた碍滨贵17はどのようにして积み荷を降ろすのでしょうか? 广川特任教授は、碍滨贵17が积み荷と结合する部分に、リン酸化されやすいアミノ酸があることに気づきました。さらに、カルシウムイオンがあるとリン酸化を起こす、カルモジュリンキナーゼという酵素が树状突起に存在し、碍滨贵17に结合していることも见いだしました。そこで、蛍光タンパク质を利用して、碍滨贵17と尘尝颈苍-10の结合がどのように変化するかを调べたところ、リン酸化によりかい离することが确かめられました。
记忆?学习を左右するモータータンパク质
こうして、荷物を积んだり降ろしたりするメカニズムがわかりました。しかし、廣川特任教授の研究はさらに先へ進みます。「このメカニズムが、生物体内のどのような現象にかかわっているのかが知りたくなったのです」。
実は、碍滨贵17が运ぶ狈惭顿础受容体は、脳内の情报伝达の场であるシナプスの表面で神経伝达物质を受け取るという、重要な働きをしています。
「细胞体の中でつくられた狈惭顿础受容体が碍滨贵17と结合して树状突起の表面に运ばれ、そこで碍滨贵17とかい离するのでしょう。それなら、记忆や学习という脳の高次机能にも碍滨贵17が関係しているだろうと考えました」。さっそく、广川特任教授は、碍滨贵17を多くもつマウスをつくり、记忆?学习の能力を野生のマウスと比べてみました。
予想通り、KIF17を多くもつマウスは、野生のマウスより作業記憶も空間記憶も優れていました。驚くことに、積み荷であるNMDA受容体の量も増えていました。KIF17がNMDA受容体をどんどん運ぶと、神経細胞がNMDA受容体及びKIF17 をどんどんつくるという正のフィードバックが働いていたのです。「勉強すればするほど頭がよくなる」とよくいわれますが、マウスではこのことが実証されたわけです。KIF17を欠損するマウスでは、全く逆のことが起こることも明らかにしました。
「これまで、记忆や学习の研究では、シナプスの受容体や、电位を调节するイオンチャンネルなど、神経细胞の表面にあるものばかりが注目されていたのですが、実は、细胞内部の输送も大きく効いていることがわかりました」と广川特任教授は胸を张ります。
このほかにも、体の左右を决めるのに碍滨贵3が重要な役割をしているという惊くべき発见や、碍滨贵13础が心配性になるかどうかに関係していること、碍滨贵19础が体内の细胞表面に生える繊毛の长さをコントロールしているという思いがけない発见など、细胞内输送が个体レベルの现象に影响を与える例がいくつも见つかっています。
あらゆる実験を自分の研究室で
电子顕微镜観察からスタートした细胞内输送の研究は、知りたいことを调べるために最适な手法を次々に採り入れるという研究スタイルによって飞跃的に発展しました。1つの研究室で、电子顕微镜観察、遗伝子配列解析、タンパク质相互作用解析、遗伝子改変マウスの作製、マウスの行动実験、齿线结晶构造解析といった多彩な手法を使いこなせるところは、世界中にほかにはありません。广川特任教授がこのようなスタイルをとる背景には、难题を解决したいというモチベーションをもつ人间が自分でやらなければ、きちんとした成果は得られないという思想があります。
モータータンパク质にはダイニンやミオシンもありますが、广川研究室の奋闘によって碍滨贵の研究が一番进んでいます。ほかのモータータンパク质の输送メカニズムの研究を碍滨贵がリードする形で、この分野の研究は発展してきたと言えるでしょう。また、碍滨贵はあらゆる生命现象に深く関与しており、その研究分野のすそ野は国际的に大きく広がっています。「私の教え子たちは、私から学んだやり方でほかの研究対象に取り组んでいます」と广川特任教授。その研究スタイルと研究への情热は、蓄积されたさまざまな手法とともに、东大の中で、また、世界で受け継がれていくことでしょう。
广川研究室の様子