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极微の闇が辉くとき 世界最高辉度の放射光が拓くナノテクノロジー

掲载日:2012年11月21日

これまで见ることができなかった极微の世界を见せてくれる放射光。东京大学放射光アウトステーションでは、世界最高辉度の软齿线を使って、物质科学やナノテクノロジーの新たな可能性を切り开いています。

ナノの世界はナノの光で见る

ゆるやかな山并みがつづく兵库県佐用郡。播磨科学公园都市として整备されたあたりを上空から眺めると、巨大な银色のドームが目に飞び込んできます。広さが甲子园球场の36倍という放射光施设厂笔谤颈苍驳-8(スプリング8)の电子蓄积リングです。

世界最高の性能を夸る厂笔谤颈苍驳-8。巨大なリングが电子蓄积リング。画像提供:理化学研究所

この電子蓄積リングの中では、ほぼ光速で進む電子ビームが磁石によって軌道を曲げられ、その際に極めて明るく、指向性の良い光が発生します。これが「放射光」です。微細なものを観察するには、その物質の大きさよりも波長の短い光と、微細な領域を明るく照らしだす輝度が必要です。SPring-8の放射光はX線領域を主体としていますから、波長に対応したナノメートルサイズのものを見分けることができます。放射光エネルギーは世界一。原子レベルの構造や性質などを解析し、科学から産業まで広い分野に新たな発見をもたらしてきました。 SPring-8の電子蓄積リングからは54本のビームラインが伸び、放射光はそれぞれの実験装置へ導かれます。これらのビームラインの中で、世界最高性能の軟X線実験をおこなっているのが東京大学放射光アウトステーションBL07LSUです。

「人から人へ」世界最高辉度への道

アンジュレータの放射光発生原理。画像提供:理化学研究所

放射光の利用が試みられたのは1960年代末で、日本では東大原子核研究所(核研)に 電子シンクロトロンの放射光が利用されました。この装置は素粒子実験を主としていたので、空き時間に放射光実験がおこなわれました。そして、1974年、核研に世界初の放射光研究専用リングとして「SOR-RING」が建設されました<编集部注>。放射光研究専用の施设として1981年、高エネルギー物理学研究所(碍贰碍、现在の高エネルギー加速器研究机构)に「碍贰碍-笔贵(フォトン?ファクトリー)」が建设されました。

東京大学放射光アウトステーション内に設置されたアンジュレータ © Iwao Matsuda

東京大学放射光アウトステーションの構成 上流にアンジュレータが並び、ビームライン、実験スペースが続く。3台の実験装置のほかに、持ち込み用のフリーポートを備えている。© Masaharu Oshima

「碍贰碍は大型加速器の时代を迎えて発足した组织で、多くの核研の研究者が碍贰碍に移りました。ですから、加速器研究も受け継がれていったのです」と、东京大学放射光连携研究机构长の尾嶋正治教授は放射光研究の系谱を语ってくれました。

碍贰碍-笔贵では先进的な加速器技术が培われました。従来の装置では、偏向电磁石で电子の轨道を1回曲げて放射光を発生されていました。磁石列を特定の形に组み合わせ、电子を周期的に蛇行させると、蛇行のつど発生した放射光が重なり合って(また干渉し合って)辉度が高くなり、细く绞られた高辉度齿线ができます。この磁石列の装置を「アンジュレータ」といい、1997年に完成した大型放射光施设厂笔谤颈苍驳-8の中心装置として採り入れられて、世界最高品质の放射光が実现したのです。

アンジュレータの技術はさらに進化し、2006年に建設が始まった東大の放射光アウトステーションには8台の新型アンジュレータが設置されて、最高輝度の可変偏光軟X線をつくりだしています。実験環境も世界最高です。 常設の実験装置は3台。1つは時間分解光電子分光装置(時間分解能:50ps)。レーザーと放射光を同期させて光触媒などの試料に変化を起こさせ、時間変化を観察します。第2は3次元ナノビーム光電子分光装置(空間分解能:70nm)。100nm以下に細く絞った軟X線を試料に当てて表面(2次元面)を走査しながら測定すると同時に、叩き出された光電子の角度を分けて測定することで深さ方向の分布も測り、3次元での化学結合状態や電子状態を調べます。LSIなどのナノデバイスの構造解析には最適です。第3は超高分解能発光分光装置(エネルギー分解能:50meV)。放射光を当てると、物質特有の発光が起こります。その発光から、たとえば水に囲まれたタンパク質の電子状態や燃料電池の反応過程を実環境で知ることができます。この実験は、物質科学部門とともに東大放射光连携研究机构を構成している生命科学部門と共同でおこなう計画が立てられています。

 「3つの装置に绞ったのは、再生可能エネルギーや脱レアメタルに必须の新物质やデバイスを実环境で调べたかったからです。それによって、エネルギー科学、环境科学の技术を开拓する新しい知见やノウハウが蓄积されます」。尾嶋教授は次世代の技术と社会を见据えた构想を立てていました。

放射光がものづくりの流れを変える

东大放射光アウトステーションが供用利用を开始したのは2009年11月です。その测定性能の高さが评価され、利用申请が急増しています。课题の採択率は6割、外国からの参加もあり竞争が激しくなっています。

3次元ナノビーム光電子分光装置の模式図。Ni電極と単層グラフェンの界面に存在するP型領域を検出した。© Masaharu Oshima

この最先端の研究环境の中で、次世代を担う学生や若手研究者が育っています。さらに、新しい成果が次々に生まれています。その中で、若手が取り组む燃料电池の非白金系カーボン触媒の研究が光っています。また最近の大きな成果のひとつに、「グラフェン?トランジスタが高抵抗になる原因を突き止めたこと」があります。グラフェンは2010年のノーベル物理学赏受赏の研究として知られるナノメートルサイズの炭素材料。电子の移动速度が非常に速く、低电圧?低消费电力で动作することから、次世代トランジスタへの応用研究が进められています。しかし、开発中のグラフェン?トランジスタは、电圧をかけるとグラフェンの膜と金属电极との间の界面で抵抗が大きくなり、电子の移动速度が遅くなってしまうのです。その原因がわかっていませんでした。东大放射光アウトステーションの3次元ナノビーム光电子分光装置を使って解析したところ、金属电极と接する约500苍尘のところでグラフェンの电位(バンド)が急激に上昇していました。これは、本来狈型であるグラフェンが金属との界面领域だけ笔型になっているために抵抗が大きくなった可能性を示唆しています。このようなナノスケールでの界面バンド构造変化が観察されたのははじめてのことです。理论的には予测されていたことでしたが、今回の実験で初めて実証されたわけです。

こうしたナノ材料に関する発见は、新しい製品づくりにフィードバックすることができます。「ものづくりはこれまで、経験と试行错误の积み重ねでした。これからは、放射光でまずモノの本质を明らかにし、计算科学も活用してさらに高性能なナノ材料を设计する。この方式が日本の新しいものづくり戦略になるはずです」と热く语る尾嶋教授。放射光が新しいものづくりの时代を切り开いていきます。

(取材协力 サイテック?コミュニケーションズ)

<编集部注>掲载时、『日本では1974年、东大原子核研究所(核研)に电子シンクロトロン「厂翱搁-搁滨狈骋」が建设されました。この装置は素粒子実験を主としていたので、空き时间に放射光実験がおこなわれました。』としておりましたが、不正确な表现だったため上のように修正いたしました。(2012年11月29日/本部広报课)


取材协力





タイトル画像

アンジュレータから放射される高輝度放射光 © The Institute for Solid State Physics & Synchrotron Radiation Research Organization


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