技術と当事者目線でよりよい義足を | Entrepreneurs 06

このシリーズでは、东京大学の起业支援プログラムや学术成果を活用する起业家たちを绍介していきます。东京大学は日本のイノベーションエコシステムの拡大を担っています。

叠颈辞苍颈肠惭株式会社(东京都文京区)は、下肢切断者の歩行を动力でアシストする「パワード义足」を开発するベンチャー公司です。人型ロボットの技术を応用し、义足ユーザーの动きや意図をセンサーによって感知する「身体とロボティックスの融合」を実现する製品で、2021年秋には贩売を始める予定です。
同社を率いるのは中国出身の起业家、孙小军代表取缔役です。自身も义足ユーザーで、「従来の义足の不便さを実感し、エンジニアとしてもっと优れた义足が作れないか」と、2015年に日本のグローバル公司を退职する直前、东京大学大学院情报理工学系研究科の博士课程に入学しました。ここでロボットの技术を基础から学び、パワード义足の研究开発をしたことが同社の技术のベースになっています。今后は义足だけでなく、高齢者や健常者も利用できる、近距离移动のモビリティデバイスの开発を视野に入れています。
日本で义足に出会う
孙さんは9歳の时に病気で右足を切断し、その后は松叶杖生活を余仪なくされました。
2012年に华中科技大学と东北大学の交换留学制度を活用して来日。1年间の滞在で日本人の优しさに触れ、东大大学院工学系研究科の修士课程に进学することを决意しました。孙さんが义足を使うようになったのは、驹场キャンパスの寮で生活していた当时、目黒区役所に出向く机会があり、そこで日本の福祉制度を知り、义足购入に补助金が出るのを知ったのがきっかけでした。
「松叶杖を使うと両手を塞がれるので、いろいろと不便でした。义足を使うと、伞をさしたり、カフェテリアでトレイを持ったりするのも楽になりました。何よりも、见た目が健常者と同じになったのが大きかった」といいます。
しかし、义足を使うにつれ、不便な点が気になってきたそうです。「义足には筋肉の働きをする动力がないので、疲れやすく、転倒しやすいほか、阶段の昇降にも不便が出てきます。エンジニアとして、もっといい义足が作れないかと、纯粋な気持ちが生まれました」
博士課程でパワード義足の研究を始めてから、「いつかは技術を世の中に出したいという気持ちが強くなった」と話します。博士課程1年の時、東大产学协创推进本部が起業について講義?講座を提供する「アントレプレナー道场」に参加。世界最大のテクノロジーと文化の祭典「サウス?バイ?サウスウエスト」(米国テキサス州で開催)に同本部が毎年送り込むTodai To Texasチームにも選ばれて出展、革新的なアイディアや製品に贈られる「Interactive Innovation Award」を日本チームとして初めて受賞(Student Innovation部門)しました。「このような支援がなければ、技術を世の中に出せなかった」と振り返ります。
そのほかにも、起业に関するきめ细やかなアドバイスや创业时からのインキュベーション施设への入居、教育、技术移転など、大学から様々な支援を受けています。
寡占市场に切り込む
现在使われている义足のほとんどは、动力がないものです。少数派のパワード义足は海外の2社が製造し、欧州や米国で贩売する寡占市场です。価格は约1千万円と高価で、竞争がないため、技术革新も生まれにくい土壌があるそうです。
この市场に切り込もうとするのが叠颈辞苍颈肠惭です。孙さんは、「我々は、大学の技术を活用したおかげで开発コストを低く抑えています。竞合会社の3分の1以下の価格で市场に出す予定です」と、同社の製品の优位性に自信を见せます。中国という大市场の开拓を図るべく、2020年、同国におけるビジネス拠点として深圳市に现地法人を立ち上げました。
パワード义足には、ユーザーの动きを感知するセンサーや、モーター、バッテリー、制御基板が内蔵されています。博士课程时代からの课题だったバッテリーの持続时间は、1回の充电で成人の一日平均歩数以上の駆动が可能になりました。今后の课题は、モーター音の低减と、センシングの一层の向上です。「様々な环境で义足が使われるので、人のランダムな动きをセンサーで感知しなければなりません。これが难しい」と话します。义足ユーザーにも実験に参加してもらい、エンジニアが社内の义肢装具士や理学疗法士と议论を重ねながら技术の向上を図っています。

ニッチ市场から転换
现在、日本の义足ユーザーは约10万人。ある调査によると、世界的な市场规模も2,000亿円程度だそうです。孙さんは、「今后は、高齢者を含む、足の不自由な方のモビリティを高めるパーソナルモビリティデバイスを开発したいと思っています。高齢者を入れると大きなマーケットになるし、ニーズも高い。近距离移动に必要な自転车や车椅子などよりも、もっとスマートなモビリティデバイスはないかと、日々、自分に问いかけています」と目标を语ります。
孙さんは2020年半ば顷から、デジタルマーケティングの一环として、义足をテーマに厂狈厂でビデオの発信をしています。日本の福祉制度を绍介したり、义足を様々な角度で取り上げたりして、人気を博しています。
「休日は外に出て、歩く姿を妻に动画で撮影してもらいます。その后、编集したり、选曲したりしています」
厂狈厂への発信が仕事一筋の生活のわずかな息抜きになっているそうですが、「好きな仕事をやっているので、全く疲れません」と、今后も事业拡大に迈进する姿势を示してくれました。

叠颈辞苍颈肠惭株式会社
孫小軍代表取締役は、東京大学大学院情報理工学系研究科情報システム工学研究室の稲葉雅幸教授の指導の下、パワード義足の技術の開発を始め、2016年には科学技術振興機構(JST)による大学発新産業創出プログラム(START)に採択された。STARTの事業プロモーターとなった東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)のサポートを受けて、この技術を基に、2018年12月に叠颈辞苍颈肠惭株式会社を設立。UTECから創業資金を調達したほか、东京大学协创プラットフォーム株式会社(东大滨笔颁)の1st Roundに採択された。さらに、2020年には、東大IPC、UTEC、JSTを引受先として第三者割当増資で5.5億円を調達した。「Powering Mobility for All (すべての人々のモビリティにパワーをもたらす)」をミッションとして掲げ、すべての人々がスマートに、楽に移動できるモビリティデバイスや関連サービスの提供を目指す。
取材日: 2021年2月2日
取材?文/森由美子
撮影/Kohei Hara