ボルボックスの2新种、顿狈础配列データに基づき世界で初めて発见 「日本产ぼるぼつくすニ就テ」百年来の谜を解く

ボルボックスは池や水田で回転しながら泳ぐ小さな緑色の球体であり、分类の研究は18世纪のリンネまで遡る。通常无性生殖を行うこの生物は、ある条件が整うと雌雄に分かれて有性生殖を行うという兴味深い特徴を持ち、メスとオスの起源や多细胞化などの研究に用いられている。

日本产の新种ボルボックス?カーキオルム(学名Volvox kirkioru)。© Hisayoshi Nozaki
(A)~(C). 無性群体。(A) 内部に次の世代の5個の娘群体が発達している。(B) 群体の表層の体細胞が太い細胞質連絡で連結するので 「真のボルボックス」(ボルボックス節)であることがわかる。(C) 体細胞を横から見ると卵形である。(D)雌雄同体の有性群体。卵 (e) と精子束(S)を同時にもつ。 (E) 約50個の受精卵をもつ成熟した有性群体。(F)成熟した受精卵。細胞壁は先が尖った真直ぐな刺をもつ。ボルボックス?グロバトル(学名Volvox globator)とは卵形の体細胞 (c) と受精卵の細胞壁の先が尖った刺 (F)をもつ点で異なる。本研究の成果に基づく。
しかし、种を分类する上で重要な有性生殖を、人為的に诱导することは困难であった。そのため、1944年以来、新种の记载を含めたボルボックスの分类学的研究が滞っていた。
今回、东京大学大学院理学系研究科 野崎久义准教授らと庆应义塾大学のグループは、日本各地から得たボルボックスの培养株を用いて、有性生殖を诱导する方法论を确立することに成功した。さらに、顿狈础配列データに基づいて构筑した系统树により种を分类したところ、それら日本のボルボックスが2つの新种であることを明らかにした。
これは、ボルボックスの培养株を用いて有性生殖を诱导した有性群体(注1)や受精卵(注2)の形态、并びに顿狈础配列データを使用して「真のボルボックス(注3)」の新种を発见した世界で初めての成果である。これにより、明治の动物学者石川千代松(东京帝国大学教授)が1896年に日本产のボルボックスを报告して以来、正确な种の同定がなされていなかった日本产のボルボックスの种の実体が明らかになった。
本研究によって日本产ボルボックスの种は外国产の种とは异なることが明确になり、今后、図鑑の出版を通じて日本产ボルボックスの种についての正しい认识が普及すると期待される。また日本产ボルボックスの多様性を保全する上でも重要である。今回确立された顿狈础配列データと有性生殖の形质に基づくボルボックスの现代的な种分类の方法论は、今后、世界各地のボルボックスの正确な种の多様性と実体を明らかにする上でも有用であると予想される。
注1 有性群体
ボルボックスは通常、群体の中にある大きな生殖細胞が分裂して娘群体をつくる無性生殖で増殖する。有性生殖では卵と精子が受精して受精卵を作るが、そのために無性生殖とは異なる特殊な群体(有性群体)が発達してくる。有性群体には雌雄同体の場合と雌雄異体の場合があり、それらは種によって異なる。雌雄同体の有性群体は10~100 個以上の卵と数個の精子束(細長い精子が群体となって発達したもので、受精時にはばらばらになり卵と受精する)を同時にもつ。一方、雌雄異体の有性群体は卵と精子束を別々にもつ。
注2 受精卵
卵と精子が受精したボルボックスの受精卵は细胞壁を分泌し赤褐色の休眠细胞となり、乾燥や低温に耐える。真のボルボックスの仲间の受精卵の细胞壁には特有の刺があり、その形态が种の分类基準となっている。
注3 真のボルボックス
基準種(ボルボックス属の代表として指定される種)ボルボックス?グロバトルに代表される、太い細胞質連絡をもつボルボックスの1群で、ボルボックス属の中の4個のサブグループ(属と種の中間の分類階級の「節」)のひとつのボルボックス節に相当し、Smith (1944) は “Euvolvox “ と分類している。太い細胞質連絡をもたないボルボックス属の他の約10種とはかたちと系統的位置で大きく異なる。基準種を含むこのグループだけを「ボルボックス属」にすべきという考えもある。
论文情报
Nanako Isaka, Hiroko Kawai-Toyooka, Ryo Matsuzaki, Takashi Nakada and Hisayoshi Nozaki,
“Description of two new monoecious species of Volvox sect. Volvox (Volvocaceae, Chlorophyceae), based on comparative morphology and molecular phylogeny of cultured material”,
Journal of Phycology 4: 2012 (in press). doi: 10.1111/j.1529-8817.2012.01142.x.