ウイルス?バクテリア感染における新たな免疫応答制御机构を解明 自己免疫抑制机构の解明や感染症の治疗法确立に期待

JST課題達成型基礎研究の一環として、東京大学生产技术研究所?分子免疫学分野の根岸英雄特任助教、柳井秀元特任助教らの研究グループは、ウイルスとバクテリアの重複感染によって重篤な症状が引き起こされる分子機構の一つを解明しました。ウイルスに感染した患者が、さらなるバクテリアの感染によって、非常に重篤な症状を起こす事が広く知られていますが、その背後にある分子機構についてはよく分かっていませんでした。

ウイルス、バクテリア感染ではそれぞれ异なった受容体経路が强く活性化され、病原体に応じた适切な免疫応答が活性化される(左)。ウイルスに感染した状态では滨尝-12辫40遗伝子が抑制された状态にあり、抗バクテリア応答ができない(右)。そのため、ウイルスに感染したマウスは极微量のバクテリアの感染に対しても高い感受性を示す。
本研究グループは、ウイルスに対して活性化する生体の防御応答が、同时にバクテリアに対する防御応答を抑制する性质を持っていることを発见しました。さらにその分子制御机构について详细に调べたところ、ウイルス由来の核酸により强力に活性化される滨搁贵3という転写因子が、ウイルスを攻撃するために必须であるインターフェロン(滨贵狈)の遗伝子を活性化する一方、バクテリアを攻撃するために重要な滨尝-12辫40の遗伝子を抑制するという二面性があることが新たに判明しました。この机构により、ウイルスに感染したマウスではバクテリア感染に対する免疫応答が强く抑制されることが明らかとなりました。滨搁贵3による抗バクテリア応答抑制机构は免疫応答の弱点とも言え、様々なウイルス/バクテリアによる重复感染症に関与していると考えられます。一方で、滨尝-12辫40は罢细胞応答を制御する重要な遗伝子であり、罢细胞応答が引き起こす様々なアレルギー?自己免疫疾患に関与すると考えられています。そのため、今后、この仕组みをさらに详细に解析することによって、アレルギー?自己免疫疾患抑制机构の理解や様々な重复感染症の治疗法の确立に繋がる可能性があります。
なお本研究は、本研究グループが東京大学 大学院医学系研究科 免疫学教室在籍中に行われたもので、東京大学 大学院医学系研究科 免疫学教室の本田賢也准教授、中島啓研究員らと共同で行ったものです。
本研究成果は、2012年 5月20日18時(英国時間)に英国科学誌「Nature Immunology」のオンライン速報版で公開されました。
论文情报
Hideo Negishi, Hideyuki Yanai, Akira Nakajima, Ryuji Koshiba, Koji Atarashi, Atsushi Matsuda, Kosuke Matsuki, Shoji Miki, Takahiro Doi, Alan Aderem, Junko Nishio, Stephen T Smale, Kenya Honda & Tadatsugu Taniguchi,
“Cross-interference of RLR and TLR signaling pathways modulates antibacterial T cell responses”,
Nature Immunology Online Edition: 21 May 2012 (Japan time), doi: 10.1038/ni.2307.